鳥の家(とりのいえ)

鳥の巣をつむいで、飛んだり、鳴いたりする記録

2012年03月

なぜか写真がアップロードできないので、今日は写真なしの投稿です。

怒涛のうちに確定申告が終わり、ボトルネックになっていた仕事も整理し、起き上がれないまま3.11が過ぎ、ひっそりと庭のクロッカスが咲き、水仙も咲き、春が来て…。

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奈良へお墓参りに行きました。前回中年クライシスの 話をしましたが、まさにこのクライシスにのみ込まれて力尽きてしまった昔の記者仲間、Hさんのための初の墓参でした。

私が25歳のとき、記者として入社2年目に配属された地方支局。その市役所の記者クラブで、1歳上で他社の記者として働いていたのがHさんでした。適度に忙しく恵まれた土地で、私たちは希望と力に任せてのびのびと仕事をしていました。心の病とは一生縁のなさそうなバランス感覚と行動力を持っていた人でした。

人生の折り返し地点で道に迷ったときの闇の世界は、想像以上に深く危うい。ひとたびバランスを崩すと、どんな人でも飲み込まれてしまいそうになるのです。どんな人でも。 

Hさんの心のバランスが崩れ始めたのは、中国へ留学して新聞社をやめ、仕事の拠点を中国へ移してからだったといいます。体調を崩しては奈良の実家へ戻り、療養してまた中国へ戻るという生活。無理を重ねるうちに、酒量が増えて体がぼろぼろになっていったそうです。

限界が来て長期休業。やがて退職。中国語のできる記者なら再就職の口はいくらでもあるはずなのに、体力のなさから次のステージに踏み出す力を失い、酒によって閉ざされてしまった心の袋小路から抜け出せず、魔が差したように亡くなってしまったのだと聞きました。

人は限界が来ると、自分の行動を自分で止められなくなる。その不可逆点をいつ乗り越えてしまうのか、自分でも分からないのが恐ろしいところなのです。

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人が突然に亡くなると、周囲の家族の心も不可逆点の向こう側へ大きく引きずり込まれそうになります。だからこそ、生きている人たちは 故人の思い出を語るという名目で集まり、 改めて円陣を組み、こちら側で足を踏ん張らなければいけない。

私たち(当時の仕事関係者)はHさんのご両親と、半日だけでしたが心の円陣を組み、そして解散しました。

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怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。 (フリードリヒ・ニーチェ)

 おわった…、か、確定申告の準備…。しんどかった…(ガクッ、死亡)。

 確定申告のための決算書はお仕事の通信簿なので、これがはっきりして初めて、将来の進路が見えてきます。

 センセイのところを飛び出して、センセイからの仕事が全部なくなり、自力で仕事を取るようになって1年半。ガンと落ち込んでいた売り上げも、やっと回復しました。ていうか脱サラ以来の自己ベスト記録じゃないかな?おおー。

 収入の3分の2は経費で引かれるから、結局は極貧生活だけれども(笑)。

 これからどうしよう。上向き(事業拡大)コースと横ばい(現状維持)コースを選べる立場になってしまった。

 ここで重要なのは、私の体力は今後も横ばいか、下降コースをたどるということ。精神力は…あまりお金儲けに燃えることができない…くやしい(笑)。

 こんなことを続けていていいのかな、とも思います。仕事の縁はますます増えて、私の恐れているしがらみに変わりつつあります。私はここで骨をうずめるのだろうか…。
現状に対して何か煮え切らないものがあるけど、体力もないし仕方ないか、という気持ち。

 しまった、心に空虚感が生まれてしまいそう。これが中年クライシスか(笑)。

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中年クライシスって何だろう。正式にはミッドライフ・クライシスというようです。ちょっとコピペしてきました。

「子供から大人になる思春期に危機が訪れるのと同じように、人生の後半に到達するときにも危機が訪れます。人生の前半に無視してきた問題や義務や欲求が、この時期になって現れてくるのです」

「たとえば今まで価値があったものに対して価値を見いだせなくなったり、今までの生き方に関心を失い始める、といった形でこの危機はやってくるかもしれません。あるいは、突然、原因不明の身体的症状に悩まされるかもしれません。いずれにしろ、この時期に問題や症状が生じたら、それは新しい自己実現のための病だと考えられるのです。これに直面しないでいる限り、その問題なり症状なりに、悩まされ続けることになりますが、勇気を持って立ち向かい、これを乗り越えると、それは新しい可能性や創造性への飛躍につながります」

 よく「危機から逃げるな」「問題に対峙しろ」などと書いてありますが、私は思春期の頃どうやって問題を乗り越えたっけ。だいたい思春期の問題って何だったんだ。もう忘れちゃったよ~(笑)。

 あ、思いだした。「やりたいことが分からない」とか「やりたいことを仕事にできない(かもしれない)」とか。私は書くことを仕事にしたいのは分かっていて、運よく新聞社に入っちゃったので、かなり理想的な形でクライシスを脱したのでした。

 中年の危機は何だろう。「これが本当に自分のやりたいことだったのか」「まだやりたいことがあるけど、体力がなくて不安」とか。

 こうやって整理してみると、結局私は体力がなくて、将来が不安なんだなーと思います。

 ……また山登り始めようかな。春になったら。

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